夜明け前を歩く/山人
の正体が丸見えとなり、比喩のまったくない詩のようでもある。星がまだ空にあるとき、特に光ってるのは金星で、その後、分刻みで明るくなりはじめる。俗世界のない時間、自分の中に帰る時間帯、それが夜明け前であると確信している。長年生きてきたうえでの結論なのだが、この時間帯は、すべてが自分の為だけに存在するかのような感覚になるのである。なによりも、これから夜が深まるのではなく、夜が明けていくという確かな未来が存在するからである。白みはじめる瞬間は実は刹那である。
朝、四時を少し回ったころ表に出て歩き出す。山村では人家を過ぎると外灯はない。光源は星と、出ていれば月くらいだが足元を照らすべく灯りはない。闇であ
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