詩の日めくり 二〇一九年八月一日─三十一日/田中宏輔
ものになっているのだろうか。悪意というよりは、自己本位性といってもいいかもしれない。もちろん、第一に自分のことを考えるものだろう。とりわけ自意識の高い人間は。自尊心の強い人間は、と言い換えてもよい。しかし、徳性といったものも、人間は持ち合わせているのだが、それが欠如しているのだ。キツネ狩りが貴族のスポーツであると本に書いてあって、それについて、長いあいだ疑問に思っていた。徳性がまったく感じられないのだ。人間同士がキツネ狩りをし合っているような小説だった。いま、P・D・ジェイムズを読みつづけている。人間が人間に対して残酷である事実を描いている。しかし、ジェイムズの小説には、人間が人間に残酷であると同
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