彼に会いたい/ホロウ・シカエルボク
代遅れな轟音を立てて通り過ぎる、水面で水鳥がけたたましく騒いでいた、目をやるとそいつは一声鳴いてすっぽりと川に潜ってしまった、それから少し橋から離れたところへするりと顔を出した、そんな場面を見たのは初めてのような気がする、なぜかほんの少しからかわれた気分になりながら、川を見下ろす小さな公園の、セメントの白いベンチで少しの間頭を空っぽにした、答えがあることは決して利口なことじゃない、それは愚かさと浅はかさの象徴のようなものだ、問とは答えを求めるためのものじゃない、そこへ至るまでにどんなプロセスを経たのかということが大事なのだ、この世には問すら生まずに答えを得ている人間も居る、そいつらは決まって増えや
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)