彼に会いたい/ホロウ・シカエルボク
 
不幸に違いないさ、そして太陽はその日の頂点に辿り着いた、影が地表に飲み込まれる数十分、風と光の中でほんの少しの間、すべてが幻になって消え去る夢を見ていた、目蓋の裏側で、そんなフレーズを思い出し、奇妙な笑いが浮かぶ、確固たる世界は確固たる曖昧、断言出来るってことはそういうことだ、おかしな目くらましのあとで、時間はすました顔で再び流始め、人生が片端からゴミ箱へと移動していく、それを苦悩に思うのは二十代の始めに止めた、そのころ五十歳だったストーンズが、長い長いワールドツアーに出たからさ、生きれば生きる分だけ、たったひとつの言葉が何十年分もの意味を持つ、そんな現象について深く知ったからさ、路面電車が時代遅
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