対話篇/やまうちあつし
 
爪にかけて」
思えばこんな間違いはない
何といっても相手は
ネコ科の猛獣だ
分別があるように見えても
黒い毛並みの内側には
野生の血脈が滾々と息づいている
平和ボケした人間の喉元を
食い破ることなど朝飯前だ
「心配するな
 襲いかかったりはしないよ」
黒ヒョウは静かに言い放つ
「今はまだな
 しかし考えてもみろよ
 今回のことでわかっただろうが
 世界は可能性ではなく
 不可能性で成り立っているとは思わないか?
 ニンゲンも黒ヒョウも同じさ
 できそうなことではなくて
 できそうもないことによって 
 我々の歩みは力強く
 導かれてゆくのだよ」
妙な汗を
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