対話篇/やまうちあつし
汗をかいてしまった
明日からこいつを
助手席に乗せるのも避けなくてはならない
しかし
そんなことできるだろうか
それこそ可能性ではなく
不可能性によって
定められたとおりのことなのでは
ふと脳裏に浮かぶのは
信号待ちで停車した
自分の車のフロントガラス
運転席には
だらりと力なくシートに体を預けた
私自身の姿
首から胸にかけて
真っ赤な地で染まり
生気があるようには見えない
そして助手席には
黒ヒョウがいる
血で染まった口元を
べろり、と舌なめずり
とても穏やかな表情で前を見据える
そしてこちらに気づいたようにつぶやく
「青だぞ」
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