「あなたを待っていたのよ」なんて、退屈している女ならみんな口にするものだ/ホロウ・シカエルボク
飾りみたいな悲しみを二つの建物は秘めていた、その家に向かって歩いた、それを見物したら現実に帰ろう、そう思いながら、近づくにつれその薄ら寒い空気に震えさえ覚えた、一つ目の家にはすべて鍵が掛かっていて入ることは出来なかった、その鍵はいつか開かれることはあるのだろうか、そう思いながら二軒目に向かった、そのころにはどうせ駄目だろうという気持ちになっていたが、そんな予想に反して玄関のドアはなんなく開いた、家具の全く置かれていない屋内には埃だけが積もっていた、一人で内見に来た客のように一つ一つの部屋をゆっくりと見て回った、一階には何も無かった、家具どころか、語るべき特徴すらない、標準的日本人がなんの疑問も持た
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