詩の日めくり 二〇一七年十月一日─三十一日/田中宏輔
きみのいっさいが、ぼくをよろこばせた。
蝶は蜜がなくなっても、花のもとにとどまっただろうか。
ときが去ったのか、ぼくたちが去ったのか。
蜜に香りがなければ、蝶は花を見つけられなかっただろう。
もしも、あのとき、きみが微笑まなかったら。
二〇一七年十月四日 「蝶。」
おぼえているかい。
かつて、きみをよろこばせるために
野に花を咲かせ
蝶をとまらせたことを。
わすれてしまったかい。
かつて、きみをよろこばせるために
海をつくり
渚で波に手を振らせていたことを。
ぼくには、どんなことだってできた。
きみをよろこば
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