静寂の裏側の出来事/ホロウ・シカエルボク
 

怒りとも悲しみともつかない咆哮が脳裏でずっと続いていた、目蓋と眼球の間に、書き上げることが出来ない手紙が、皺にならないように丁寧に慎重に差し込まれているみたいで、そんな行場のない思いは瘡蓋の下でじくじくと膿んでいる古い傷のように僕の心情に爪痕のような上書きをいくつも刻みつけた、まるで心だけが吹雪にさらされているみたいだ、感想にはなんの意味もなかった、秋口の山肌を枯葉が風に弄ばれて転げ落ちているようなものだった、だから僕は感覚について言葉で確認することの一切を取りやめた、一方通行でしかない時間はまるで融通が利かなくて、ペットボトルの水はそいつに引っ張られてだんだんと温くなる、同じリズムだ、と僕は
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