This is a pen/やまうちあつし
リビングからはみ出す
地球の上に書くしかない
地平線まで届くしかない
書ける
駆ける
オオカミよ
爪と牙と比喩
遠吠えとオノマトペ
一行の詩のために死ねるか
死ね
死ね
詩ね
詩ね
そして最後に
その者の名を
ちょうどその時
ペンはカラリ、と
地上に落ちた
空が白み始め
部屋には一人と一本が
横たわっている
どこかで誰かの声がする
眠っていたのは
ペンではなかろう
それ以後、ペンは目覚めていない。書き記された言葉の数々は耳目
を集め、人口に膾炙する。多くの人がそれに救われ、奮い立ち、絶
望し、創作意欲をかきたてられた。持ち主はペンの次なる目
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