詩の日めくり 二〇一七年二月一日─三十一日/田中宏輔
いお坊さんに
手をぎゅっと握られたことが思い出される
まだ20代の半ばくらいの
コロコロと太った童顔のかわいらしいお坊さんだった
あ
で
その「はやし食堂」の夫婦には息子が二人いて
長男がぼくと中学がいっしょで
同級生だったこともあるのだけれど
彼は洛南高校の特進で
ぼくは堀川高校の普通科で
彼は現役で神戸大学の医学部に受かって
ぼくは一浪で同志社に行ったんだけど
彼のお母さんには
ぼくが大学院に進学するときに
「大学院には行かないで働いたら」なんてことを言われた記憶がある
自分の息子が医者になるから
自分の息子のほうが偉いとい
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