ヒエロファニー/北井戸 あや子
あと一度まばたいたら この視界も偽物にかわる
ガラス越し見据えていた 夜明けの海、らせんの轍
錯視してもう意味のない海鳴りを抱いて貝はねむる
さっきより近付いてる波打ち際、永遠が満ちたら
いつか編んだ悲鳴なぞって読めなくなった言葉がきっとあの日に棄てた今日の意味だとしても遅かった
ねえルードウィヒ 僕はずっとあなたの前で泣いているんだ
「いつか信じたものはなんだったの?」
適当な虹 しおれた月 うろ覚えのあの歌の続き
あと何度忘れてゆく 夜という明滅のはたて
荼毘に付す君の線香 繰り返すそれさえ嘘?
半夏生が茂る頃指折り数えて出来た朝日 きっと夢かその手が掴んでいた
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