詩の日めくり 二〇一六年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
わぁーと湧き出して
そこらじゅうを這い進むあいだ
ぼくはその半透明のなめくじを観察した
ぼくは完全にかわいていたので一瞬触れても大丈夫だったのだ
なめくじたちは夜の街に
月の光を浴びてきれいに輝きながら
家々の壁や戸口に湧き出て
家から出てきた人間たち
歩いている人間たちに触れていったのだ
触れられた人間たちは
たとえ、その触れられた箇所が靴でも
そこから全体に
すうっと半透明になってしまって
なめくじ人間になっていったのだ
なぜなら、彼らはみんな多少とも濡れていたからなのだった
女性のなめくじ人間も少しいた
なぜかしらエプロンをした肉
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