詩の日めくり 二〇一六年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 

たぶん
しないだろうなあと思いながらも
はい
と言いながら
その電話番号に目を落として
書かれた紙を静かに受け取りました
そしたら先生が
わたしが死んだら
この人が追悼文を書いてくれますが
田中さんが亡くなったら
わたしが書きましょう
とおっしゃって
ぼくが
ええー
と言うと
奥さまが
わたしも書くわ
とおっしゃって
またまた
ええー

ぼくが言い
大声で笑うと
奥さまが
わたしの追悼文は
だれが書いてくれるのかしら
とおっしゃって
そこでぼくが
奥さまは死なれませんから

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