詩の日めくり 二〇一六年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
めのものであった。

彼は
ぼくのことを愛していると言った。
ぼくはうれしかった

どんなにひどい裏切られ方をするのかと
思いをめぐらせて。


二〇一六年十一月十六日 「見事な牛。」


見蕩れるほどに美しい曲線を描く玉葱と
オレンジ色のまばゆい光沢のすばらしいサーモンを買っていく
見事な牛。


二〇一六年十一月十七日 「死んだ四角だ。」


さあ
きみの手を
夏の夕べの浜辺と取り替えようね。
わたしに吹く風は
きみの吐息のぬくもりに彩られて
あまい眩暈だ。
きみの朝の空は四角い吐息で
窓辺にいくつも落ちていた。
死んだ四角だ。
そう
[次のページ]
戻る   Point(13)