詩の日めくり 二〇一六年十月一日─三十一日/田中宏輔
顔があったから、びっくりしたら、「差し歯やから」と言われて、差し歯って言われても、それがなにか知らなかったから、ほんとにびっくりした。そいえば、ぼくがさいしょに付き合ったノブチンは、笑うと歯茎が見えるからって言って、笑うときに、よく女の子がするような感じで口元に手をやってたなあ。そのしぐさがかわいかったけど、まあ、ノブチンも21才やったからね。いまじゃ、おっさんになってるから、もうそんなことしてないだろうけど。のぶちんは、ぼくが28才のときに付き合ってた男の子。名字がぼくと同じ田中だった。
収められたさいごの短篇「ショイヨルという名の星」を読んでいる。もう3、4回は読んでいる作品だが、よく
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