深い夜の砂漠/ホロウ・シカエルボク
 
とが出来るだろう、現状維持だけが命題の人生の中でどんな器を満たすことが出来るだろう、パースのおかしな小動物が何匹か寄って来る、彼らはおそらく餌を欲しがっている、手を高く差し出して爪を切って見せると、彼らはアリクイのようにとんがった唇でつんつんと突っついたのち興味を失くして去っていった、一匹だけが居残ってその欠片を啄んだが、静かに、座り込んで、春の窓辺の眠りのように穏やかに死んでいった、そいつらのことを何も知らなくて良かったと思った、知らないやつの死はそれほど悲しくはない、たとえそれが人間であってもね、歩き続けると次第に子守唄は聞こえなくなった、単に遠ざかっただけか、あるいは歌っていた誰かがどこかへ
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