ただ、風に揺らぐように/ホロウ・シカエルボク
ヒマかと尋ねられ、悪いんだけどいま待ち合わせをしているんだ、と答える、そうか、残念だな、と彼は答え、じゃあ、またどこかで、と言って去っていく、そんな夢だった、気付くと処置室のベッドの前で車椅子に乗せられていた、夢からすぐに帰ってこれず、一昔前のドラマで見る光景のように、わけがわからず狼狽えた、ああ、あれはとてもリアルな表現なんだな、とあとになって考えた、手摺も何もない二階への階段を上がりながら、あのとき、もしも待ち合わせの約束を反故にしてそいつについて行っていたら、と考えてみる、そのときは、こんな階段ではなくて天国への階段を上るハメになっていたのかもしれない、いや、もちろん、地獄への穴を真っ逆さま
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