ただ、風に揺らぐように/ホロウ・シカエルボク
 
どこかから滲みだしているのか、水の滴る音が微かに聞こえていた、耳を澄ましているとそれはまるで無差別で無意識で無意味な催眠術のように聞こえてくるのだった、あとはただ、もはや明確な意識すら亡くした過去が、水族館の巨大水槽をゆっくりと泳ぐピラルクのようにがらんどうの空間を移動しているだけだった、そんなところに佇んでいると、今年の初め、アナフィラキシーショックで意識を失くしたときに見た夢のことを思い出した、その夢の中で、どこか、存在しない空間の中で、実際には居ない誰かと待ち合わせをしていた、そこに、偶然久しく会っていなかった、実際には居ない知人と出くわす、本当に久しぶりだね、なんて会話をして、このあとヒマ
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