よっつの梯子/AB(なかほど)
 
ない

(もちろん僕の彼女のことではなくて
 かりふぉるにあおじさんのこと)





● 大きく腕を広げて


指先のその指先の紡ぐ白
伝えたい言葉が先に消えてゆく


 自分の主張を伝える手段として安易に詩を使っちゃいけない、とかなんとか、どっかで見たような気がする。けれど、もちろん「僕」の伝えたいことは主張なのかパッションなのか追憶なのか区別はつかない。凡庸なるかな。壊れそうなほど繊細な世界を紡ぎだす言葉を連ねる人には強い羨望とともに、肩をわしづかみにしてでもこの世界に引き止めなければ! という気持ちに駆られる。言葉だけではない。その表情、声、指先、毛の震
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