詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
飛び込んだ、たくさんのぼくがいた。目をあけたまま沈んでいた。

 ホテルの高階の部屋から見下ろしていると、たとえ明日がプールの水のなかに飛び込んで泳ごうとも、飛びこまずにプールサイドに横たわっていようとも、同じことだった。いる場所をわずかに換えるだけで、ほとんど同じ場所にいるのだから。どの明日もひとつの明日だ。どれだけたくさんの明日があっても。


二〇一五年九月二日 「自由」


 自由の意味はひとによって異なる。なぜなら何を不自由と感じているかで自由の観念が決まるからである。ひとそれぞれ個人的な事情があるのだ。そこに気がつけば、言葉というものが、ひとによって同じ意味を持つもので
[次のページ]
戻る   Point(14)