料理で俳句?楊梅(ヤマモモ)/SDGs
 
先にあった。リンゴやミカンを除けば果物がそうそう食べられる時代ではなかったので、楊梅は印象に残った。大人たちは食べないようだったが、子どもとしてはうれしい。味は、甘いような、渋いような、日向臭い雑味もあってそう旨いものではない。実の割に種が大きく硬く、食べた満足感も薄かった。

 二回目はそれから三十年後、赤坂の丹後坂の階段。会社が赤坂にあり、昼食をとるために毎日のように丹後坂を上り下りした。丹後坂の片側は壁になっており、楊梅の実はその壁を越えて伸びる樹から落ちてきたものだった。足を止め、見上げる。葉の間にぎっしりと楊梅が実をつけていた。「ほら、ヤマモモ」と昼食の連れに拾い上げた暗紅色の実を見
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