料理で俳句?楊梅(ヤマモモ)/SDGs
 
を見せたが、「?」と無関心だった。楊梅について自分のことを話そうとしたが、止めた。連れは若く、話したところで楊梅を果物とは決して理解しないだろう。

 三回目はパーティ会場だった。今でもあるのかどうか確認していないが、不忍池のそばに法華倶楽部という会社が五重塔を模したホテルを建築し、その披露パーティだった。「よりにもよって、なぜ楊梅がここに」と意表を突かれた。実は鮮やかな色も美しく、五歳の頃の日向臭い暗紅色とは全く別物だった。パーティが進んでも誰も手を付けず、いつの間にか下げられていた。

 四回目は東戸塚の公園。ゆるやかな坂道を登っていると、楊梅の実が転がってきた。転がってきた先をみると楊梅の樹がたくさん実をつけている。公園には子どもたちがたくさんいたが、もう誰も採らないし拾わない。楊梅はただ花を咲かせ実をつけ、実を落とす。鳥さえも来ないようだ。

 楊梅の実は朝摘んだものが昼にはダメになるといわれるほど腐りやすい。あしがはやい。だが五歳の時に出会った楊梅の記憶は、いまも鮮やかに残っている。それにしても、五歳から遥かにきたもんだ。

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