詩の日めくり 二〇一五年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
と思った。
ぼくも
あの水死体のように
海のうえに
ぷかぷかと浮かんでいたいな
って思った。
海に浮かんだ
水死体の頭が一つ、動いた。
ぼくは、死んだ目で
テレビ画面を見つめるぼくに目をやった。
テレビ画面のきらきらと輝く海が
ぼくの瞳に映っていた。
その瞳の中心に、ぼくを見つめるぼくがいた。
ぼくのなかに
ぼくの胸のなかに浮かんだ
いくつもの水死体。
花であり
葉っぱであり
幹や
根っこであり
水そのものでもある
ぼくの胸のなかで
ときどき暴れては大人しく眠る
いくつもの水死体たち。
自転車をこいで
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