授命/葉leaf
正しい恋愛、正しい結婚、そういうものに思いをはせると論理が自壊する豪奢な音が聞こえる。恋愛は規範に先立つもので、結婚は規範を超越するものだ。そんなことをお前とともに語りたかった。この果てのない社会の溶鉱炉で苦しみぬいて死んだ親友のお前にな。俺は父親になるんだよ、夢みたいじゃないか。なあ、お前。俺は父親になるんだよ。
お前と妻は一度も出会うことがなかった。まだ互いを紹介するには早い、俺がそう思っているうちにお前は死んでしまった。俺にとってかけがえのない二人が出会わなかったのは俺の人生を象徴する大いなる欠落だ。欠落、断裂、損傷、破壊によってとりどりに彩られた俺の人生はすべてを斜めに掛け違える。
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