授命/葉leaf
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妻の妊娠は容易ではなかった。心拍確認の不安、出血の不安、つわりの苦痛、妻はそれらを明るく乗り越えてきた。妻は決して明るくはない人生の谷間に燈明を投げ入れるのがうまかった。それ以上に未熟な俺は苦しんだ。妊娠という体の隅々までに鉛を流し込む重い事実が俺を酸欠状態にした。俺は妻以上に不安で、しかも不安をらせん状に増幅させる悪癖がここでも発揮されたのだ。
赤ん坊の存在。この語りようのない高貴な存在。驚きに満ち、神秘的で、不意に訪れる天啓のようなものが常にそこに在るかのような存在。確かにこの赤ん坊は俺と妻との子供だが、俺と妻だけが所有しているのではなく、すでに自ら権利を持ち義務を担い、そして俺たちのあずかり知らない聖なる存在の庇護に深く入っている。この赤ん坊の心を打つ存在そのものについて、お前と語り合いたかった。なあ、お前。俺の子どもが産まれるんだ。
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