詩の日めくり 二〇一四年十三月一日─三十一日/田中宏輔
二〇一四年十三月九日 「ポスト」
彼女は
その手紙を書いたあと
投函するために外に出た
ポストのところまで
少し距離があったので
彼女は顔の化粧を整えた
(これは、あくまでも文末の印象の効果のために、
あとで付け加えられたものである。削除してもよい。)
彼女は
その手紙に似ていなかった
彼女は
その手紙の文字にぜんぜん似ていなかった
その手紙に書かれたいかなる文字にも似ていなかった
点や丸といったものにも
数字や記号にも
彼女がその手紙に書いたいかなるものにも
彼女は似ていなかった
しかし
似ていないことにかけては
ポストも負けてはいな
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