詩の日めくり 二〇一四年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
うはおとなしかった。どうしてだろうか。いや、むしろ落ち着いておとなしい、いまのぼくの精神状態のほうが、以前の精神状態よりも狂っているような気がする。ちょっとしたインクの汚れ、これが数時間後に、あるいは、数日後に、頭のなかで、巨大な汚れとなって発狂したような状況を引き起こすかもしれない。などと、ふと考えた。いったい、ぜんたい、ぼくは、本の価値をどこに置いているのだろうか。内容だろうか。文字の書かれた紙という物質だろうか。その紙面の美しさだろうか。表紙の絵の好ましさだろうか。いや、そのすべてに価値がある。ぼくには価値があるのだった。そうだ。ぼくのメモの走り書きがなぜ、印刷された文字の左横に存在するのか
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