詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
H●T N●
S●METHING W●RST B●X
二〇一四年六月四日 「影」
仕事から帰る途中、坂道を歩いて下りていると、
後ろから男女の学生カップルの笑いをまじえた
楽しそうな話し声が聞こえてきた。
彼らの若い声が近づいてきた。
彼らの影が、ぼくの足もとにきた。
彼らの影は、はねるようにして、
いかにも楽しそうだった。
ぼくは、彼らの影が、
つねに自分の目の前にくるように
歩調を合わせて歩いた。
彼らは、その影までもが若かった。
ぼくの影は、いかにも疲れた中年男の影だった。
二人は、これから楽しい時間を持つのだろう。
しかし、ぼくは?
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