詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
 

ぼくは一人、部屋で読書の時間を持つのだろう。
もはや、驚きも少し、喜びも少しになった読書の時間を。
それも悪くはない。けっして悪くはない。
けれど、一人というのは、なぜか堪えた。
そうだ、帰りに、いつもの居酒屋に行こう。
日知庵にいる、えいちゃんの顔と声が思い出された。
ただ、とりとめのない会話を交わすだけだけど。
ぼくは横にのいて、若い二人の影から離れた。

二〇一四年六月五日 「循環小数」

 微熱する交番でナオコを直していると、学生服を着た自転車が突っ込んできた。驚いて目を覚ますと、「うつくしいひととき。」とナオコがつぶやいた。「カフェで、こうしていっしょにいること
[次のページ]
戻る   Point(14)