マーク/どん底
に水を掬いあげて食器を洗っている
(あたしの食器は一つとてないのだけれど)
お父さんはあたしが見えないけれど
ああ、たしかに空気を吸いあげて煙草を燻らせている
(あたしのお腹は煙でみたされているけれど)
ああ、それはあたしではないけれど
ああ、そこにほほ笑みはないけれど
ああ、たしかに視線も会話もなく
ああ、たしかにあたしは腐っている
重く重くぶれた日の或るひかり
すきま風が吹く窓辺には
マークがその鉄線の花の字のとおり
ちいさなバリケードを張って
わたしをそのひかりから守ってくれる
今日あたしは本当に消えてなくなろう
あたしはここにいるけれど
あたしはあた
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