第六七二夜の街/阪井マチ
がら、分かたれた身体の一部からでも青年は徘徊を再開する。分かれた身体は長い時間の中で再び出逢い一つに融合することもあるだろう。結局、青年は歩き続け、そして何度でも死に至る。我々もまたこの性質を受け継いでいるに過ぎない。その為この世界で罠に掛かる人間は尽きることがない。
「だからあなたたちはこの《街》を離れてはならないのだ」
どの年の《講師》もこう言って話を締めくくり、《街》の境界から外に出ることの危うさを強く訴えて上演会は幕を閉じる。
終演後、幼い住民たちは自分の家への帰路に就く。翌日からはまた何も変わらない生活が始まるだろう。
しかしふとしたときにあの一夜の記憶が頭を過り、《街》の
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