第六七二夜の街/阪井マチ
くこの無端の都市がいかにして成立したかの説明を試みる神話である。
都市の一部が何らかの原因で厚みを失うことがある。それにより塗り潰されていた虚無が目を覚まし、街に住む我々の存在自体を危険に曝すこと、それこそが罠の正体であるのだ。さらに言えば、それを避けられる安定した一帯を《街》と呼ぶ。《講師》はさらに話を続ける。
神話には続きがあり、最初の都市の誕生から今に至るまで一人の青年が内部を彷徨い続けているのだという。それが我々の始祖であり、現在の住人たちは全て青年の身体から生まれ落ちた子供たちである。青年は幾度も記憶を失いながら、今この時も果てのない都市の中を徘徊している。幾度も命を落としながら
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