第六七二夜の街/阪井マチ
 
、どのようにしてそれが起きたのかは未だに分からない。
 また別の年には《講師》はこんな話をした。
 ある地域に伝わる神話では、かつて世界は乱舞する球体群とそれらを抱え込む遙かに巨大な虚無で構成されていたとされる。ある夜、球体の一つが割れて芽吹き、大輪の花を咲かせた後に硬い種子を辺り一帯にばらまいた。それらがある朝一斉に破裂し、種の大きさを遙かに超える巨大な容積の都市を生み出したのだという。長い時を掛けて花開く球体群はその数を増していった。結果として複雑怪奇な都市が縦横に拡がり続け、広大な虚無はみるみるうちに塗り潰されていった。そしてその営みは現在も続いているのだ。
 これは、我々を取り巻くこ
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