短歌そのた置き場/朝倉キンジ
夜}
あのビルの合間に
大きなひとがいる
しずかに
正座しながら
赤い蛍光を発し
輪郭さえ
湯のなかのように
あかるい
あのひとはいつか
くらがりに置かれた
ビー玉のなかでみた
(ほんとにしずかな極限倍率の世界)
(暗くつめたいガラスの曲面のつやのなかに
永劫にとどめられた 人のかたちのもの)
(そして今 暗やみのむこうで
ふしぎにだれかを 待ち続けるもの)
あのひとはきっと
もうずっと 永い夜を
あそこにいるのだ
電波塔の
紫のひかりが
大気に作用して
そういう人も見えるのか
(誰を待っているのだろう?)
私は時空の
飾り窓として
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