カップ/山人
カップを持ち上げると素っ頓狂な声を出した。
「なに?これ?」
「なにってなに?」
見ると、雄太のカップだけ水滴がおびただしく付いている。
「冷たい飲み物を飲んだわけじゃないのにね・・・」
「そういえばさぁ、このカップって雄ちゃんと付き合い始めたときからあったよね?」
「ああ。大分古いよね」
由美はおどけて少し後ろ下がりし、雄太を指差し
「まさか、まさか?もしかしてまさかなの?」
「はっ!?、いみわかんねぇし」
雄太は指差しし、由美を座らせた。
「このカップはさ、オヤジの葬式の後、なんか知らないけど、コーヒーカップが欲しくなってさ、瀬戸物屋さんで買ったんだ
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