カップ/山人
 
ていた。妻となる由美と共に二人で住む家に引越しをし、荷物の整理をしていた。
 雄太は大学を出ていないながらも、専門学校を出て市役所に勤務することが出来た。出世こそ見込めないが、地道にやれば家の一軒も建てれるだろう、慎ましい未来があった。
 「ガス点くかな?」
 「あぁ。たぶん大丈夫だと思う」
 「そういえばさ、雄ちゃん、あんまりお父さんの話し、しないよね?」
 「・・・」
 お湯が沸くと由美はカップを二つ出し、インスタントだけど・・と言い、コーヒーを注いだ。
 雄太は久々の肉体労働で汗もかき、インスタントコーヒーであっても美味く感じていた。
 「オヤジにはよく罵倒されたよ。子供の頃
[次のページ]
戻る   Point(2)