カップ/山人
葬場で最後のお別れのお経が唱えられた。やはり誰だか解らぬが私の死の為に泣いてくれている人が居るようだ。
いよいよ私は肉体を失うときが来たようだ。
まだ田植えを過ぎたばかりの田園の青い空に、生の人の焼けた匂いが舞い上がる。あれは私だ、私が燃えている。そう思った瞬間、私は風にめくられ、瞬時に空へと押し上げられた。
魂のかけらのようなものがまだ私の肉の細胞に食い込んでいたのが、それが噴煙となって私の魂と合体したのだ。
これで私は完全に幽体となり、物質から逃れられたのだ。
死んだ後は賽の河原を渡り、天国か地獄に行くのだ。死後の世界の常識はそう言われていた。
かなり上昇したかと思う
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