現実だってたぶんまじないみたいなもん/ホロウ・シカエルボク
 
ないんだけどな、だけど今日はどうもそういう日みたいだな、写真の話からこっち、ずっと思い出話ばかりしているよ、そう―強烈過ぎる思い出は逆に、記憶という枠を飛び越えるよな、いつだって昨日のことみたいに蘇ってくる、そんな瞬間がある、俺にとっちゃそうだな、ミック・ジャガーのハモニカの音色とか、パティ・スミスの歌ったフェイド・アウェイとか…上手くいったときの朗読とかさ、そんなもんになるな、人によってはそれは、悲しい思い出ばかりになるかもしれない、そう…身内が死んだときとかね―そういえば父親が死んだときの記憶って、病室で対面した時よりも、そこに向かうまでの午前三時のガラガラの大通りのことが鮮明に思い出されるよ
[次のページ]
戻る   Point(2)