現実だってたぶんまじないみたいなもん/ホロウ・シカエルボク
 
るよ、昼間はごちゃごちゃに込み合う通りなんだけどね、あの時は、ろくにブレーキを踏むことがなかった、月が綺麗に出ていて―こんな話しててもしょうがないか―俺たちは記憶で出来てる、こんなことばっかり話してる夜には特にそんな風に感じるよ、だけど、記憶ってのは意外と裏切るからな、あんまり信用しちゃいけない、誰かに訂正されたら、ああ、そうだったかもしれないな、くらいで片付けておけばいい、どうせそれは見直したり訂正したり出来るようなもんじゃないんだ、写真に語れるのは何色の服を着てたとかってことくらいさ、なあ、記憶にとらわれてがんじがらめになるのは良くないぜ、俺たちはある意味近い過去意外に確かなものを持っては居ないかもしれないが、だけどそれだって連続的に上書きすることが出来るんだ、感覚って意味でいえば、俺たちは毎秒死んで生まれ直しているのかもしれないな、そう考えてみなよ、自分なんてそんなにこだわるほどのもんじゃないのかもしれないなって気分になってくるから。


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