現実だってたぶんまじないみたいなもん/ホロウ・シカエルボク
上手く事が運ばないけれど俺だけの話じゃない、苛々するのは筋違いってもんだ…昔のことなんて覚えてるようで意外と覚えていないものだ、俺は人よりは余分な記憶をたくさん抱えているらしいけれど、そんな俺にだって記憶の片隅にも残っていない出来事はあるさ、不意に押入れの隅から出て来た写真なんかが、そんなことを思い出させてくれることもある、そんなとき俺は、決まってもどかしい気持ちになるんだ、その写真が俺よりもずっと、その時のことを覚えているような気がしてさ、写し取られた俺の絵が、俺よりもずっと―まあ、だけど―一度忘れてしまったものは、たぶん二度とリアルな感触にはならない、そう思わないか?誰かから思いもよらなかった
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