この街の壊れた玩具たち/ホロウ・シカエルボク
女は少し躊躇ったあと首から縄を外してゆっくりと下りて来た、それから椅子を抑えている俺の横に座り込んで顔をまじまじと見た、「デッド・ガール」って映画に出てくる質の悪い元いじめっ子によく似ていた、「なんでここにいたの?」「雨宿りだ―そろそろ帰りたくなったんで傘を探して部屋をあちこち覗いていたんだ」ふう、と女はため息をついた、「もう少し気長に待ってくれてたほうがありがたかったわ」そうかな、と俺は異議を唱えた、「もう少し早く帰る気になってりゃあんたに五回も蹴られなくて済んだんだ」む、と女は短く唸った、「それについては素直に謝っておくわ」「じゃあ恨みっこなしだ」俺は立ち上がった、「まだ死ぬつもりかい?」女は
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