この街の壊れた玩具たち/ホロウ・シカエルボク
 
女は首を横に振った、「もう一回やるなんて御免だわ」「じゃあ家まで送る」と俺は座ったままの女に手を差し伸べた、「それで、よかったらそのあと傘を貸してくれないか?」女は肩をすくめた「何と答えればいいのかしら」「ありのままに答えてくれれば」「ええとね…もう帰るところが無いの、追い出されちゃって…」じゃあ話は早い、と俺は言った、「俺の家に一緒に行こう、部屋は余ってる、少しの間なら貸してやるよ」女は喜びとも苦笑とも取れる笑みを浮かべた、「で、その代りに…?」今度は俺が首を横に振った、「そういうつもりはない」「早く家に帰りたいんだ、もう他に傘を貸してくれるやつも見つからないかもしれないし…」俺は頭を掻いた、女はまあまあ納得という感じで何度か頷いた……結果的に、俺は嘘をつくことになった、言い訳はしない、だって、明かりの下で見たときの彼女の汚さときたら…!どうしたってまずシャワーを貸すことになるじゃないか?


戻る   Point(0)