平衡/カンチェルスキス
。
ロータリーの
客待ちのタクシー運転手が
仲間とタバコを吸いながら
しゃべってた。
車の屋根やボンネットが
日の光にやわらかく溶けていた。
突然おれはいなくなり
風景だけが残った。
そしてハンバーガーがきて
おれは現実に引き戻された。
ポテトとコーヒーを
交互に挟んで
薄い肉とパンをぱくついた。
女は突っ伏して
まだ眠っていた。
オフィスビルの38階で残業してても
おかしくないような女だった。
ポテトの箱に
ハンバーガーの包みを
丸め込んでいた。
ふくらんだバッグが
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