老いたアスファルトの波の上、無機質ながらんどうのクジラ/ホロウ・シカエルボク
なんてこの世には在り得ない―売春婦はきちがいとその気がないやつを見極めるのが上手い、俺に愛想を振りまこうとしたそいつは目が合ったとたんに踵を返した、悪いね…炭酸の空瓶を歩道に放置されたどこかのマーケットのカートの中に捨てた、もしかしたらそれで少しだけ幸せになれる浮浪者がいるかもしれない、マーケット―ここ十年くらいこの街にマーケットなんかないはずだ、マーケット…暗がりの中でようやく読めたカートに刻まれた店の名前には覚えがあった、ここから少し歩いたところにあった巨大な複合施設だ、確か数年しか営業しなかった―こんなうらぶれた場所にそんなもの作ろうとするほうがどうかしてる…俺はその場所が今どうなっているか
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