老いたアスファルトの波の上、無機質ながらんどうのクジラ/ホロウ・シカエルボク
 
く、窒息する寸前になって初めて気づくのだろう、もう取り返せないその時になって初めて…メタリックなグリーンの日本車がバレエのようにカーブを曲がって消えていく、約束されたエンジンがすべてが裏切られる街路に爽やかなオイルのにおいを残していく、どこかの店で喧嘩騒ぎが起こっているらしい、くぐもった怒号、甲高い悲鳴、倒れるテーブルやスツールの音、激しくガラスが砕ける音がいくつも聞こえる、じきにパトカーはやって来るだろう、秩序は当然のごとく維持される、特にそれがギャラリーの多い小競り合いの場合には…チンピラにからまれたら迷わずやつらを呼ぶべきさ、取るに足らないことは誰も誤魔化そうなんて考えもしない―この世界はも
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