老いたアスファルトの波の上、無機質ながらんどうのクジラ/ホロウ・シカエルボク
 
はもう死んでいるのだ、物質的な効率や功績が功を奏す舞台ではその先に訪れる未来というものがない、たったひとつの価値観が壊れるだけでいい、アイデンティティは簡単に瓦礫と化すだろう、すべてが失われたあと、立ち上がろうとする力などもう誰も持ち合わせてはいない、数年前からそこにある鍵穴を壊された車のボンネットに座って、視覚障害者が認識する白色蛍光灯のような月を見上げた、そんな風に景色が歪むのはここが歪んでいるからだ、月は月のままそこに浮かんでいるだけだ、然るべき場所に行けば美しいそれを目にすることが出来るだろう、行き場のなくなった概念はすべてを歪ませる、君の在り方も、俺の在り方も、建築物も、路面も、花も…な
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