粉机/竜門勇気
 
なんの価値もないゴム球であってそれを靴や上着が覆っているだけのように思えました。
そしてそのときそれは真実であって、わたしと上着や靴の間にはただどちらにも拒絶されたごちゃごちゃとしたあぶくになった水がねっとりと洗い流すこともできずに在るのです。ただ、在るのです。
やがて日が暮れてまいりました。
夕暮れはわたしの周りをまたねとねとした、履き古した靴で死刑台に登るようないやらしい人懐っこさで包みましたから、あまりに驚いてしまって川面を見ました。
水路には騒々しく波紋が広がって、見るからにどこでも生きていけそうな水草のたぐいが蔓延っています。
そこにはわたしの知っているものとは別の力強さもあり
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