からっぽの世界/ホロウ・シカエルボク
 
ようになった
テツとラノは
マチではなくなったマチを優しく見守った
どのみち彼らにはそれしかすることがなかった
やがてマチが死に
照明が明る過ぎる公民館で葬式が行われた
子供らはテツとラノを出来る限り気がけてくれたが
以前のように自由に振舞える時間が少なくなっていた
そのうちテツがある日突然倒れ
少しだけ血を吐いて動かなくなった
脳梗塞だった

ラノはたったひとり残され
二人がいた場所を眺めながら毎日を生きた
時折窓の側に椅子を持って行っては
もはや自分らの故郷だとは思えないほどに様変わりした町を見つめた
(私らはこんな未来のためにここで生き続けたのか)
希望だっ
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