からっぽの世界/ホロウ・シカエルボク
 
だったそれはいつしか絶望へと化けていた
ある年の冬の夜中
ラノは窓の側で
カーテンに火をつけた
燃えていく三人の人生を見つめながら
泣き喚き笑いながら焼け死んだ
彼らの家は町の外れにあったから
火が大きくなるまで誰も気づかなかった
みんな年老いたラノが不注意で火事を起こしたのだと思った

ラノの葬式が終わり
埋葬が済むと
町の人間たちはあれこれと話して
テツとマチとラノの家の残骸を片付け
一度更地にしてから公園を立てた
展望台のある公園は観光客を喜ばせた



それからほどなくして
町は名を変えたということだ



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